砂糖の生産は甜菜から70%以上
「甜菜(てんさい):ビート」はカブ・ダイコンに似た野菜であり、甜菜から「砂糖」を作ることができます。ヨーロッパでは一般的に甜菜から砂糖生産をおこなっており、日本では北海道などで多く栽培、国内で生産される砂糖の約75%が甜菜から生産されています。
世界ではどの国がどのくらい甜菜を生産しているのでしょうか?
世界の甜菜 (ビート)
生産量 ランキング
世界の甜菜の生産量
世界一位  ロシア
世界二位  フランス
世界三位  アメリカ
世界の甜菜 生産量ランキング
Sugar beet
Production (tonnes/year)
| 国 | 生産量 (t) 2022年 | 
|---|---|
| 世界 | 260,998,613.64 | 
| ロシア | 48,907,752.66 | 
| フランス | 31,496,750.00 | 
| アメリカ合衆国 | 29,550,640.00 | 
| ドイツ | 28,201,400.00 | 
| テュルキエ | 19,000,000.00 | 
| ポーランド | 14,154,120.00 | 
| エジプト | 13,557,070.98 | 
| ウクライナ | 9,941,460.00 | 
| 中国 | 8,933,200.00 | 
| オランダ | 7,256,600.00 | 
| イギリス | 6,015,000.00 | 
| イラン | 5,000,000.00 | 
| ベルギー | 4,743,710.00 | 
| ベラルーシ | 4,227,070.00 | 
| チェコ共和国 | 4,055,470.00 | 
| 日本 | 3,545,000.00 | 
| オーストリア | 2,709,530.00 | 
| デンマーク | 2,291,800.00 | 
| スペイン | 2,001,040.00 | 
| モロッコ | 1,898,039.55 | 
| スウェーデン | 1,892,500.00 | 
| セルビア | 1,667,107.00 | 
| スイス | 1,353,353.00 | 
| カナダ | 1,278,613.00 | 
| イタリア | 1,110,280.00 | 
| スロバキア | 1,096,750.00 | 
| リトアニア | 728,060.00 | 
| チリ | 675,149.73 | 
| クロアチア | 572,190.00 | 
| モルドバ共和国 | 478,200.00 | 
| ハンガリー | 470,220.00 | 
| キルギスタン | 468,093.00 | 
| フィンランド | 380,200.00 | 
| カザフスタン | 305,653.47 | 
| ルーマニア | 281,330.00 | 
| アゼルバイジャン | 210,645.20 | 
| トルクメニスタン | 143,184.42 | 
| チュニジア | 91,983.92 | 
| アルメニア | 64,705.28 | 
| シリア | 60,461.00 | 
| イラク | 32,208.32 | 
| コロンビア | 30,304.20 | 
| パキスタン | 28,797.00 | 
| ベネズエラ | 25,174.60 | 
| アルバニア | 21,253.00 | 
| マリ | 11,191.00 | 
| レバノン | 6,103.37 | 
| アフガニスタン | 6,000.00 | 
| ギリシャ | 4,950.00 | 
| エクアドル | 4,627.86 | 
| スロベニア | 4,420.00 | 
| 北マケドニア | 4,274.13 | 
| ボスニア・ヘルツェゴビナ | 2,121.62 | 
| ウズベキスタン | 1,979.00 | 
| メキシコ | 877.31 | 
| アルジェリア | - | 
| コンゴ | - | 
| キプロス | - | 
| ドミニカ共和国共和国 | - | 
| エストニア | - | 
| ジョージア | - | 
| アイルランド | - | 
| イスラエル | - | 
| ラトビア | - | 
| ルクセンブルク | - | 
| マルタ | - | 
| ニカラグア | - | 
| パレスチナ | - | 
| ウルグアイ | - | 
各国
甜菜(てんさい)情報

甜菜の重さ・エネルギー
甜菜の重さは1個約500g~1kgであり、100gあたり約350~380カロリーです。1kgの甜菜から約160gの砂糖を生産する事が可能です。
砂糖のエネルギーは100gで386カロリーです。
「ビート」
甜菜は一般的に「ビート」と呼ばれ、世界中で「砂糖」の原料として利用される野菜です。日本の砂糖も70%以上が甜菜を利用した砂糖であり、一般的に消費されます。
甜菜からどうやって砂糖をつくるの?
85度程度のお湯に甜菜と石灰を加え、そこから抽出された琥珀色の液体を煮詰めた「シロップ」を結晶化させたものが砂糖になります。ヨーロッパでは砂糖の最低価格が設定さえていましたが、2017年に「1トン当たりの価格価格」に変更されています。
砂糖税
ヨーロッパでは肥満率の上昇により「砂糖税」「ソーダ税」を導入している国が多く存在します。
「世界の砂糖消費量ランキング」の記事はこちらになります。よろしかったらご覧ください。
ロシア
甜菜 情報
ロシアの甜菜
ロシア語で甜菜は「Cвекла(スベークラ)」です。
「ビート」が日常的に消費される
ロシアでは「テーブルビート」がサラダやボルシチに加えられ、日常的に消費される野菜の一つです。ビートは甜菜に比べ10%ほど糖分が低くなりますが非常に甘く、子供にも非常に人気がある野菜です。
ロシアの砂糖生産
国内で多くの砂糖を生産していますが海外からの輸入も多く、国際砂糖価格の上昇により国内の砂糖生産量を増加させています。2022年の世界情勢の悪化により、ロシアは半鎖国状態が続いており、国内の甜菜による砂糖生産が更に増加すると思われ、今後、甜菜の作付け面積が増加すると思われます。
ロシアの甜菜生産地
主に南西部の「クラスノダール地方」「ヴォロネジ州」「リペツク州」「タンボフ州」「クルスク州」などで多くの甜菜が栽培されています。
フランス
甜菜 情報
フランスの甜菜
フランス語で甜菜は「Betterave(ベトラーヴ)」です。
フランスの砂糖生産
フランスで生産される砂糖の100%が甜菜から生産されています。
フランスの甜菜生産地
主に北部の「オー=ド=フランス地域圏」を中心に生産されています。北東部の「グラン・テスト地域圏マルヌ県」に存在する「シャンパーニュ・アルデンヌ地方」は甜菜の名産地であり、非常に多くの甜菜が生産されています。これらの地方で生産された甜菜は工場に運ばれ直ぐに砂糖に加工されます。
2012年に始まったソーダ税
フランスにソーダ税が導入されたのは2012年であり、世界で初めてソーダ税が導入された国です。2012年に1リットルあたり0.076ユーロだったソーダ税は2018年に1リットルあたり0.03 ユーロ~0.24 ユーロに増税され、1リットルあたり12g以上加糖されている場合は2倍に増税されます。
米国
甜菜 情報
米国の砂糖生産
アメリカの砂糖自給率は8割を超えています。国内で生産される砂糖の半数が甜菜から生産された砂糖であり、甜菜の生産量は2000年代から横ばいを保っています。
アメリカの砂糖生産地
主に北部の「ミネソタ州」「ノースダコタ州」、中西部の「コロラド州」、北西部の「モンタナ州」、中部の「ネブラスカ州」、中北西部の「ワイオミング州」、西部の「カリフォルニア州」、北西部の「アイダホ州」「オレゴン州」「ワシントン州」で甜菜栽培がおこなわれています。主に灌漑農業(人工的に水を引き込む農業)がおこなわれていますが、東部は雨が多く天水農業がおこなわれています。
アメリカのソーダ税
アメリカは肥満が多く、炭酸飲料など加糖された飲み物に「ソーダ税」がかけられています。 1オンス(約30ml)あたり1セントの税金がかけられており、1ドルのジュースには12セント、2リットルのジュースには68セントの税金がかかります。
ドイツ
甜菜 生産
ドイツの甜菜
ドイツ語で甜菜は「Rüben(ルーベン)」です。
ドイツの砂糖生産
国内で生産される砂糖のほぼ100%が甜菜から生産されています。甜菜から砂糖の抽出は1747年のドイツ人科学者「アンドリュ・マルグラフ」により発見され、1799年にマルグラフの弟子「アハルド」により甜菜から砂糖を製造する事を可能にしています。
ドイツの甜菜生産地
すべての州で甜菜の栽培がおこなわれていますが、とくに生産量が多い地域は西部の「ニーダーザクセン州南部」、西部の「ノルトライン=ヴェストファーレン州西部」西の「ラインラント=プファルツ州東部」、南部の「バーデン=ヴュルテンベルク州中北部」「バイエルン自由州」です。
テュルキエ
甜菜 情報
テュルキエ(旧トルコ)の甜菜
テュルキエ語で甜菜は「pancar(パンチァール)」です。
テュルキエの甜菜生産地
主に中西部の「コンヤ県」、中部の「ヨズガト県」、中西部の「エスキシェヒル県」、中部の「アクサライ県」「カイセリ県」、中西部の「アフィヨンカラヒサール県」で甜菜の生産がおこなわれています。
甜菜の原産地はコーカサス地方
甜菜はカスピ海やコーカサス地方が原産であり、主に家畜の飼料として利用されていました。甜菜から砂糖生産が可能になるとにヨーロッパ各国で生産されるようになり、テュルキエでも多くの砂糖が甜菜から生産されるようになりました。
ポーランド
甜菜 情報
ポーランドの甜菜
ポーランド語で甜菜は「burak cukrowy(ブーラク ツクロヴィ)」です。
甜菜の砂糖は人気がない?
ヨーロッパでは甜菜を利用した砂糖生産がおこなわれており、ポーランドも甜菜から砂糖生産をおこなっています。
世界全体では20%の砂糖が甜菜から生産されており、残りの80%は「サトウキビ」から砂糖が生産されています。サトウキビは「バイオエタノール」にも加工され(甜菜からも生産が可能です)主に亜熱帯で生産されています。
ポーランドの甜菜生産地
主に南部の「Śląsk(シレジア)地方」、西部の「ヴィエルコポルスカ県」、中北部の「クヤヴィ・ポモージェ県」、南東部の「ルブリン県」なので甜菜栽培がおこなわれています。
エジプト
甜菜 情報
エジプトの甜菜
エジプトで利用されるアラビア語で甜菜は「شمندر سكري(シャーマンダル スーカリ)」です。
エジプトの甜菜生産地
エジプトはナイル川の水を利用した灌漑農業がおこなわれており、主に中部の「ミニヤー県」、北部の「シャルキーヤ県」などで甜菜生産がおこなわれています。収穫された甜菜は工場へ運ばれ、砂糖へ加工されます。
甜菜の砂糖生産は18世紀から
エジプトで甜菜を利用した砂糖生産が広まったのは18世紀からであり、以前は主に家畜の飼料として利用されていました。エジプトではサトウキビ生産が西暦641年から始まっており、現在もサトウキビの生産がおこなわれています。
ウクライナ
甜菜 情報
ウクライナの甜菜
ウクライナ語で甜菜は「Цукровий буряк(ツィクローヴィ ブラャ―ク)」です。
ウクライナの甜菜生産地
主に中西部の「ヴィーンヌィツャ州」「フメリニツキー州」、西部の「テルノーピリ州」で甜菜栽培がおこなわれています。
気候変動の影響・収穫量の減少
気候変動と影響と思われる天候不順により、甜菜の「糖度」「収穫量」が減少しています。砂糖の海外輸出が増加しており、国内の砂糖生産量は増加していますが、天候不順による生産量が減少している地域なども多く、問題になっています。
中国
甜菜 情報
中国の甜菜
中国語で甜菜は「甜菜(ティヱンサイ)」です。
中国の甜菜生産地
主に北西部の「新疆ウイグル自治区」、北部の「内モンゴル自治区」で砂糖生産(主にサトウキビ)がおこなわれています。甜菜糖は約60%が広西チワン族自治区で生産されており、その他には南西部の「雲南省」、南部の「広東省」などで甜菜生産がおこなわれています。
中国の砂糖は「サトウキビ」から
国内では甜菜を利用した砂糖生産も行なわれていますが、主に「サトウキビ」を利用した砂糖生産がメインになります。サトウキビを利用した砂糖生産は国内で利用される砂糖の90%を超えています。
イギリス
甜菜 情報
イギリスの甜菜生産地
主に東部の「イースト・アングリア」、中部の「イースト・ミッドランズ」、北部の「ノース・イースト・イングランド」で甜菜が生産されています。
甜菜から砂糖が生産される事を知らない
多くのイギリス人が「砂糖はサトウキビから生産される」と考えており、自国で砂糖を生産している事を知らないイギリス人が多く存在します。実際には甜菜生産や砂糖への加工に多くの人が携わっており、国内で生産される砂糖の半数が国内で生産された甜菜から生産されたものです。
オランダ
甜菜 情報
オランダの甜菜
オランダ語で甜菜は「Suikerbiet(サーウカ―ビート)」です。
ヨーロッパの砂糖生産の規制
EUの加盟国に対し、価格・生産割当が定められていました。これはヨーロッパの中で砂糖の生産量や価格のバランスをとるためにおこなわれていましたが2017年に廃止されています。廃止後、砂糖の輸出制限が停止し、ヨーロッパの甜菜生産量は大きく増加しています。
多くの国で砂糖工場が閉鎖
輸入制限が廃止された結果、砂糖の価格は下落し、多くの国で砂糖工場が閉鎖しています。オランダでも甜菜の生産量は大きく増加していますが砂糖価格の下落により、大きな赤字に陥っています。
バイオエタノール
砂糖から「バイオエタノール」を生産する事が可能です。
ヨーロッパでは「バイオエタノールと燃料の混合」が義務付けられており、EUは2020年に10%・イギリスは4.75%のバイオエタノールを燃料に混合させています。ブラジルは1977年からバイオエタノールを燃料に混合させる法律が制定されており、現在は27%のバイオエタノールを燃料に混合させる必要があります。
日本
甜菜 情報
日本では北海道で甜菜が生産されている
日本は北海道で甜菜が生産されています。他の都道府県でも生産されていますが限定的であり、甜菜生産はほぼ100%北海道でおこなわれています。
日本の砂糖
日本の砂糖生産は70%以上が甜菜を利用した砂糖になります。サトウキビも生産されていますが、生産できる地域が限られており、主に沖縄県で生産してます。
まとめ
主にヨーロッパで生産されている
甜菜による砂糖生産は「サトウキビ」の栽培が難しいヨーロッパなどで主におこなわれています。サトウキビの生産は非常に重労働であり、過去に「奴隷」を利用したサトウキビ生産がおこなわれていましたが、1799年に甜菜を原料とした砂糖生産が開始され、1807年に「奴隷貿易の廃止」がイギリスで決定し、奴隷を利用した砂糖生産が急激に減少しました。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考
FAO, FAOSTAT. "Crops and livestock products - Sugar beet, Production (t)" (English) 1961-2022年. ©FAO 2024. 2021年08月10日閲覧。
FAOの利用規則はこちら (English) です。
サムネイル:Pixabay
ライセンスに関してはこちら (English) をご覧ください。
 
					