なぜ日本米が減少しているか?
アジア圏は「米」を主食としている国が多く、非常に多くの量の米を生産しています。日本も非常に多くの米を生産していますが、生産量・消費量と共に10位以下になります。
日本人の米の消費量減
日本は米を主食とする国ですが、食の欧米化により、米の消費量が減少しています。世界の米の消費量の上位国と比べても1/3以下に減少しており、今後、更に減少する可能性があります。
農家の減少
米農家は高齢化により、生産を辞めてしまう農家が増加しています。
なぜ日本の米が減少しているか?
2018年まで、日本は米の生産量を調整する「減反政策」を廃止しました。減反政策とは政府が「米の生産量」「米の価格」を決め、国内の米の価格を安定させる政策であり、国内に安定した米が供給されていました。
現在は廃止され、減反政策のために支払われていた「農家への補助金の停止」「農家の減少」などにより、米の生産量が減少しています。更に海外で「寿司」などの日本食ブームは続いており、ブランド米は日本人に売るより海外へ販売した方が金になる為、輸出が増加しています。
コロナ渦も過ぎ、海外の日本米の消費が更に増加、「貧乏人を相手にするより金持ちに米を売ろう」という日本の農家が増加しており、米の価格は今後も安定しない可能性があります。
世界の米
生産量ランキング
世界の米 生産量
世界一位 中国
世界二位 インド
世界三位 バングラデシュ
世界の米の生産量ランキング
Rice
Production
各国の米
情報
米のエネルギー
米はエネルギーは100gあたり約350カロリーです。タンパク質の他に糖質も多く含まれており、食べ過ぎに注意が必要です。
「ダイアベティス:旧糖尿病」にかかるリスク
米を主食とする「フィリピン」「インドネシア」の貧困層はダイアベティス患者が多く、ダイアベティスになる要因の一つが米の大量消費です。貧困層は「大量の米と少量のおかず」を食べる家庭が多く、安価に販売される「加糖された飲み物」などと共にダイアベティスのリスクを大きく上昇させる要因の一つになっています。
日本の米の消費量が減少
日本は全体的に米の消費量が減少しています。食の多様化により、米以外の穀物を多く摂取する家庭が増え、消費量は大きく減少しています。
海外の米事情
「和食」の流行により、世界中で「寿司」を扱うレストランや専門店が増加しています。日本米が利用される事は限定的ですが、日本から米を輸入するレストランなども増加しており、今後、更に米の輸出量が増加すると思われます。
日本米と海外の米の違い
日本の米は水分量が多く、一粒一粒の形がしっかりしており、米を箸でつまむ事が可能ですが、海外の米は「水分量が少ない米」「パラパラした米」が多く、寿司に適しているとは言いにくい米が利用される場合があります。
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中国
米 情報
中国の米
米は中国語で「米(ミー)」です。
中国の米生産地
国内で広域にわたり稲作がおこなわれています。
中南東部の「湖南省(こなんしょう)」、東部の「江蘇省(こうそしょう)」「江西省(こうせいしょう)」、中東部の「湖北省(こほくしょう)」、中部の「四川省(しせんしょう)」、南東部の「広東省(かんとんしょう)」、南部の「広西チワン族自治区」、東部の「安徽省(あんきしょう)」、北東部の「黒龍江省(こくりゅうこうしょう)」東部の「浙江省(せっこうしょう)」の順に生産量が多なります。
稲作の失敗
1958年から1961年にかけて「毛沢東(もうたくとう)」による農業を含めた国内の生産物の量を増加させるプロジェクト「大躍進政策」がおこなわれました。
どんな政策なの?
「稲の間隔を狭めて米の収穫量を増加させる」という、無謀かつ大胆な農業政策がおこなわれました。その結果「大飢饉」が発生し、大量の餓死者を出しました。
米の生産量は4倍に
中国は1961年から現在まで「米」の生産量は4倍に増加しています。
水田で「カニ養殖」
中国は水田でカニの養殖を同時におこなう農法が存在しており、大きな収入を得ています。
カニが逃げないようにネットで水田を囲う必要があるのと、生産量が20%程度減少するデメリットがあるそうです。カニは専門の業者が買い取ってくれるため、日本の「合鴨農法」と似た農法です。
インド
米 情報
インドの米
米はインドで利用されているヒンディー語で「चावल(チャーバル)」です。
インドの米の生産地
北部の「ウッタル・プラデーシュ州」、東部の「西ベンガル州」、南東部の「アーンドラ・プラデーシュ州」、南部の「タミル・ナードゥ州」、北部の「パンジャーブ州」、東部の「オリッサ州」、中東部の「チャッティースガル州」、東部の「ビハール州」の順で生産が多くなります。
南北の食生活の違い
インドでは南北で大きく食生活が異なり、北部は「パン」、南部は「米」の消費量が多くなります。
食生活の違いは異なる気候から
インド北部は雨量が少ない事から、インダス川の水を利用した灌漑設備(人工的に水を引き込む設備)が整備されており、「小麦」の栽培が盛んにおこなわれています。
東部や南部は雨量が多く、主に稲作がおこなわています。東部や南部にはヒンドゥー教やジャナイ教を主体とした「菜食主義者」も多く、米の消費が多くなります。
インディカ米(長細い米)
「インディカ米」は全世界で生産される米の80%以上であり、世界で消費される米のほどんどがインディカ米です。「米を調理する文化」が無かった日本はインディカ米が受け入れられることはなく、現在もインディカ米の消費は限定的です。
バングラデシュ
米 情報
バングラデシュの米
米はバングラデシュで利用されているベンガル語で「ভাত(ハー)」です。
米の消費量は日本の4倍
バングラデシュは米の消費量が非常に多く「1日約700~750g」です。日本の米の消費量は「一日約120g」であり、日本人の6倍米を消費しています。
バングラデシュは隣接しているインドと食生活が似ており、バターや香辛料で味付けされた米を多く消費します。
バングラデシュもインディカ米
バングラデシュはインドと同様に「インディカ米」を生産しています。輸出量は少なく、生産された米のほどんどが国内で消費されます。
失われた「バングラデシュ原産」
バングラデシュには約8000種の米が存在するとされていますが、その中にバングラデシュ原産の米は含まれていません。バングラデシュの先住民は国内で原産種の栽培を行なっていましたが、現在は原産種の栽培をおこなっていません。
インドネシア
米 情報
インドネシアの米
米はインドネシア語で「Beras(ブラー)」です。
インドネシアの米生産
インドネシアも米を主食として消費する国であり、自国で多くの米を生産していますが、タイ・インド・ベトナムからも米を多く輸入していています。
インドネシアの米生産地
全土で米生産がおこなっており、ジャワ島東部の「東ジャワ州」の生産量が多く、国内で一番多く米を生産しています。次に生産量が多いのはジャワ島中部の「中部ジャワ州」です。
インドネシアの米料理
インドネシアの米を利用した料理が非常に有名であり、インドネシアの焼き飯「ナシゴレン」は世界中で愛される料理の一つです。
ベトナム
米 情報
ベトナムの米
米はベトナム語で「Cơm(コーム)」です。
ベトナムで購入可能な日本米
ベトナムは国内に「日本食レストラン」が多く存在しており、国内のスーパーマーケットで「日本米」を購入する事が可能です。国内で生産される米と比較すると価格が高額であり、3倍近い価格で販売されています。
新たな農業の形
南部の「キエンザン省」では水田で「海老」の養殖が「輪作:異なる作物を同じ土地で交代して生産する方法」としておこなわれています。海老の収量は1ヘクタールあたり20~30トンであり、大きな利益をあげています。
米を利用した麺「フォー」
ベトナムは「米粉」を利用した「フォー」と呼ばれるライスヌードルが多く消費されます。
フォーは「牛肉のスープ」に加えて提供される事が一般的ですが、ベトナムには牛肉を食べる文化がありませんでした。フランスの統治下により牛肉を食べる文化が生まれました。
タイ
米 情報
タイの米
米はタイ語で「ข้าว(カーウ)」です。
タイの米生産地
タイは全土にわたり米生産がおこなわれていますが、生産量がとくに多い地域は中部の「ナコーンサワン県」「スパンブリー県」、東部の「ウボンラーチャターニー県」、中部の「ピチット県」、北部の「ピッサヌローク県」の順に生産量が多くなります。
日本の米不足を補った「タイ米」
日本は1993年に冷夏に襲われ、米の収穫が記録的に激減しました。
日本は米不足に陥り、タイから米を輸入しましたが、「インディカ米」を食べ慣れていない日本人に「まずい」と批判されました。1994年の6月に沖縄の米出回るようになり問題が解決されましたが、この騒動によりタイの国民は激怒し、日本製品の不買い運動などが発生しています。
韓国の米やイタリアのリゾットに利用される米などが日本の米と性質が似ており、味も似ています
ミャンマー
米 情報
ミャンマーの米
米はミャンマー語で「ထမင်း(ターミン)」です。
ミャンマーの米生産地
国の中央を流れる「エーヤワディー川」を中心に稲作が盛んにおこなわれています。
エーヤワディー地域は米以外にも様々なものが栽培されます。日本同様に「食用油」の生産量が非常に少なく、海外から多く輸入しています。国内の食用油の生産量を増加させるため、エーヤワディー地域で油を精製する事が可能な植物の増産をおこなっています。
ミャンマーの米の消費量
ミャンマーも米の消費量が非常に多く、2019年には日本と比べ2.4倍多くの米を消費しています。ミャンマーでも日本米の購入が可能ですが、現地の米と比べ非常に価格が高額であり、主にミャンマーに住む日本人向けに販売されています。
フィリピン
米 情報
フィリピンの米
米はフィリピンで利用されているタガログ語で「kanin(カーニン)」です。
フィリピンの米生産地
国内全土で米生産がおこなわれています。
生産量が多い地域は北部ルソン島の「カガヤン・バレー地方」、ミンダナオ島中部の「ソクサージェン地方」、ミンダナオ島北部の「北ミンダナオ地方」、ミンダナオ島西部の「イスラム教徒ミンダナオ自治地域」、北部ルソン島の「イロコス地方」の順になります。
その他の地域でも非常に多くの米が生産されています。
フィリピンの米の消費量
フィリピンは米を主食としており、年間平均200kg近くの米が消費されます。
フィリピンで開発された「遺伝子組み換え米」
フィリピンは「ビタミンA欠乏症」を発症する人が多く、米に「ビタミンA」が含まれた「ゴールデンライス」の商用生産を承認しています。ゴールデンライスは遺伝子組み換え品であり、世界中で遺伝子組み換え品の安全性を危惧しています。フィリピン国内でも賛否両論ですが、フィリピンの貧困層は「米」で空腹を満たす傾向があり、ビタミンが不足します。
米が要因の「ダイアベティス:旧糖尿病」患者が多く、主に貧困層になります
パキスタン
米 情報
パキスタンの米
米はパキスタンで利用されているウルドゥー語で「چاول(ジャーバル)」です。
パキスタンの米の生産地
主に東部の「パンジャーブ州」、南東部の「シンド州」で米が生産されており、国内で生産される米の85%以上がこれらの州で生産しています。
パキスタンの主な生産物
「小麦」「綿花」です。米は三番目に生産量が多い作物になり、国内の経済を支える重要な生産品です。
ブラジル
米 情報
ブラジルの米
米はブラジルで利用されるポルトガル語で「Arroz(アローズ)」です。
ブラジルの米生産地
南部のリオグランデ・ド・スル州の生産量が多く、国内で生産される米の40%以上がリオグランデ・ド・スル州で生産されています。
アジア圏外最大の米生産国
ブラジルはアジア圏以外最大の米生産国であり、輸出にも力を注いでいます。米の生産量が非常に多いブラジルですが、大豆・トウモロコシ・サトウキビの生産量なども多く、国内で多くの人が農業に従事しています。
南アメリカ最初の稲作の地
ブラジルは南アメリカで最初の稲作が始まった地であり、1700年代にポルトガルからの植民者によって開始されました。
カンボジア
米 情報
カンボジアの米
米はカンボジアで利用されているクメール語で「អង្ករ(アンカー)」です。
カンボジアの米生産地
カンボジア全土で米の生産がおこなわれていますが、南東部の「プレイベン州」、西部の「バタンバン州」で多くの米が生産されます。
カンボジアの稲作
カンボジアは「乾季」「雨季」があり、乾季は11月から田植えが始まり、1月から2月にかけて収穫します。雨季は5月から田植えが始まり、12月が収穫時期になります。
近年、カンボジアでは気候変動と思われる大雨・干ばつが発生しており、米の生産量が大きく減少しており、安定した収入を得られない農家は都市部へ出稼ぎへ出ます。
日本
米 情報
米の消費量の減少
主食が多様化してきており、国内の米の消費量が減少しています。
米農家の減少
日本の農家は一人当たり平均約190万円程度の収入を得ています。 日本の平均年収は400万円を超えており、農家は非常に「低収入な職業」になります。
高齢化により農家を廃業する人も多く、地方などは深刻な人手不足に陥っています。
日本の農業
日本では昔の単位で「町(ちょう)=約100mx100m」というものがあり、約1ヘクタールに相当します。日本の農家は平均で1町の農地を有している農家が多くなります。
米の価格
「1反(31.5m×31.5m)」で収穫できる「米」の量は平均で530kgです。530kgの米から「約14万円程度の収入」を得る事ができます。
肥料・除草剤・農薬・用水路整備や灌漑などにかかる土地改良費・農機具費・賃貸料(小作人の場合)などの様々な経費として「約8万円」ほど支出しています。水田 一反当りの限界利益は6万円程度となる計算になります。(人件費は除く)
まとめ
世界的な寿司ブーム
「寿司」は世界中に浸透してしており、米は世界中で消費される食物になりましたが、米の生産はアジア圏が多く、消費国も主にアジア圏になります。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考
FAO, FAOSTAT. "Crops and livestock products - Rice, Production (t)" (English) 1961-2022年. ©FAO 2024. 2021年08月03日閲覧。
FAOの利用規則はこちら (English) です。
サムネイル:Pixabay
ライセンスに関してはこちら (English) をご覧ください。