様々な乳製品に加工される牛乳
「牛乳」は世界で一般的に消費される飲み物であり、日本では明治時代から一般的に消費されるようになりました。牛乳から加工される食品は多く、世界中で非常に多くの牛乳が生産されています。
世界ではどの国がどのくらい牛乳を生産しているのでしょうか?
世界のミルク
生産量ランキング
世界のミルク生産量
世界一位 インド
世界二位 米国
世界三位 パキスタン
世界のミルク 生産量ランキング
(牛・羊・山羊・バッファローを含む)
Milk, Total - Production (Tonnes/year)
国 | 生産量 (トン) (t) 2021年 | |
世界合計 | 918,162,582.8 | |
1 | インド (India) | 208,984,429.9 |
2 | 米国 (U.S.A) | 102,654,613.7 |
3 | パキスタン (Pakistan) | 59,666,000 |
4 | 中国 (China) | 41,707,232.67 |
5 | ブラジル (Brazil) | 36,663,708.28 |
6 | ロシア (Russia) | 32,333,278.3 |
7 | フランス (France) | 25,834,800 |
8 | テュルキエ (Turkiye) | 23,200,306.1 |
9 | ニュージーランド (New Zealand) | 21,886,376 |
10 | イギリス (U.K) | 15,221,000 |
11 | ポーランド (Poland) | 14,890,270 |
12 | オランダ (Netherlands) | 14,607,880 |
13 | イタリア (Italy) | 13,997,970 |
14 | メキシコ (Mexico) | 13,074,771.28 |
15 | アルゼンチン (Argentina) | 11,553,306 |
16 | ウズベキスタン (Uzbekistan) | 11,242,745 |
17 | カナダ (Canada) | 9,466,272 |
18 | アイルランド (Ireland) | 9,039,990 |
19 | オーストラリア (Australia) | 8,858,135 |
20 | ウクライナ (Ukraine) | 8,713,900 |
21 | スペイン (Spain) | 8,702,590 |
22 | イラク (Iraq) | 7,852,424.43 |
23 | ベラルーシ (Belarus) | 7,846,883.71 |
24 | 日本 (Japan) | 7,592,061 |
25 | コロンビア (Colombia) | 6,789,000 |
26 | カザフスタン (Kazakhstan) | 6,247,200 |
27 | ケニア (Kenya) | 6,029,352.2 |
28 | デンマーク (Denmark) | 5,644,000 |
29 | エジプト (Egypt) | 5,371,834.81 |
30 | スーダン (Sudan) | 4,633,581.07 |
31 | ベルギー (Belgium) | 4,477,270 |
32 | エチオピア (Ethiopia) | 4,307,793.6 |
33 | ルーマニア (Romania) | 4,299,700 |
34 | オーストリア (Austria) | 3,867,490 |
35 | スイス (Switzerland) | 3,840,200 |
36 | 南アフリカ共和国 (South Africa) | 3,837,000 |
37 | 南スーダン (South Sudan) | 3,660,447.42 |
38 | バングラデシュ (Bangladesh) | 3,578,282.82 |
39 | タンザニア (Tanzania) | 3,331,067.34 |
40 | アルジェリア (Algeria) | 3,263,600.26 |
41 | サウジアラビア (Saudi Arabia) | 2,916,103.73 |
42 | スウェーデン (Sweden) | 2,782,220 |
43 | モザンビーク (Mozambique) | 2,762,659.79 |
44 | ネパール (Nepal) | 2,637,879.26 |
45 | モロッコ (Morocco) | 2,593,401.18 |
46 | ベネズエラ (Venezuela) | 2,444,176.67 |
47 | チリ (Chile) | 2,276,568.38 |
48 | アゼルバイジャン (Azerbaijan) | 2,223,426 |
49 | ペルー (Peru) | 2,208,731.45 |
50 | ウルグアイ (Uruguay) | 2,182,000 |
51 | ソマリア (Somalia) | 2,180,314.11 |
52 | ミャンマー (Myanmar) | 2,152,350.05 |
53 | アフガニスタン (Afghanistan) | 2,143,003.38 |
世界のミルク 情報
牛乳のエネルギー
牛乳は100gあたり約65カロリーです。
牛乳に含まれる「ラクトース」
哺乳類の乳には「ラクトース」という甘味料が含まれています。赤ん坊はこのラクトースを分解・吸収する事ができる酵素(ラクターゼ)を多く分泌しており、授乳期を過ぎると分泌量が減ります。アジア人はラクターゼの分泌量が少なく、牛乳などに含まれるラクトースが分解・吸収しにくいと言われています。
牛乳の消費量と身長の高さは関係あるの?
「牛乳を多く飲むと身長が伸びる」と考える人は多く存在しますが、牛乳を多く消費する「アルバニア」「カザフスタン」「ウズベキスタン」は平均身長が日本と同じぐらいであり、ヨーロッパの平均身長と比べ低くなっています。
牛乳を多く消費するヨーロッパでは平均身長が高い傾向があり、日本の牛乳消費量はヨーロッパと比べると非常に少なく、世界平均を大きく下回ります。
・世界平均・約70L/年
・日本平均約45リットル/年
インド
ミルク 情報
インドのミルク
牛乳はインドで利用されるヒンディー語で「दूध(ドート)」です。
インドは酪農大国
インドは酪農に携わる人が1億人を超えており、国内の主要な産業の一つです。国内では小規模な酪農家が主体であり、家族で経営をおこなう酪農家などが多く存在します。牛乳は子供の栄養源の一つとして重視されており、大量に生産・消費されています。
また、牛乳の加工品が非常に多く生産される国であり、「バター」「チーズ」なども非常に多く生産されています。
インドの牛乳生産地
北部の「ウッタル・プラデーシュ州」、北西部の「グジャラート州」、北部の「パンジャーブ州」などで火所に多くの牛乳が生産されています。
インドは牛を「神の使い」として扱う
インドは「ヒンディー教」を主体としている国であり、国民の70%がヒンディー教徒です。ヒンディー教の三大神の一人「シヴァ」は牛に乗っている絵がよく描かれており、神聖なシヴァの使いとして大切に扱われています。大都市でも牛を見かける事が非常に多く「牛を避けながら道を歩く」など日本では信じられないような日常が広がっています。
米国
ミルク 情報
米国の牛乳生産地
主に西部の「カルフォルニア州」、北東部の「ウィスコンシン州」、北東部の「アイダホ州」、北西部の「ニューヨーク州」、南東部の「テキサス州」で多く牛乳が生産されています。
酪農が有名なウィスコンシン州
ウィスコンシン州は酪農が有名な地であり、牛乳以外に「チーズ」「バター」なども多く生産しています。酪農の歴史も古く、アメリカで一番多く牛乳を生産する地域でしたが、現在はカルフォルニア州が一番多く牛乳を生産しています。
ウィスコンシン州の「コルビーチーズ」
「コルビーチーズ」はオレンジ色をしたチーズです。コルビーチーズは「セミハード」に分類されますが、水分量が多く柔らかいチーズです。ウィスコンシン州の特産品であり、輸出もおこなわれています。
パキスタン
ミルク 情報
パキスタンのミルク
牛乳はパキスタンで利用されるウルドゥ語で「دودھ(ドート)」です。
パキスタンの水牛
パキスタンは「水牛」が多く飼育されており、一般的な牛より水牛からの搾乳量が多くなります。水牛の乳は脂肪分が多く、まろやかな味わいがあり、国内では人気があります。
「水牛」と「牛」の違い
どちらも「ウシ科の哺乳類」ですが、水牛は「スイギュウ属」に属しており、種類が異なります。「角」が大きい種が多く、「バッファロー」に似ています。アジアなどの暖かい地域で「物を運ぶ」「畑を耕す」などの労働力の一つとして人間の生活に密接関わりを持ち、「神格化」がおこなわれる国も多く存在します。
輸送の問題
パキスタンは牛乳の冷蔵に問題が多く、腐敗してしまうなどの問題が生じています。
チーズなどに加工され輸出される
パキスタンで加工された「チーズ」などは海外へ輸出されています。「中国」「ロシア」への輸出が多く、パキスタンの経済を支える重要な生産品の一つです。
中国
ミルク 情報
中国のミルク
牛乳は中国語で「牛奶(ニュウナイ)」です。
中国で不安視される牛乳
中国は過去に国内で生産された乳製品を飲んだ乳児が「腎結石:腎臓でできた石がつまる疾患」を発症するなど、国内の乳製品に対し不安を抱える消費者が存在します。中国でも牛乳は健康のために「1日1杯」飲む人が多く、国内の重要な栄養源の一つとして定着しています。
現在は厳しい検査などがおこなわれており、安全で質の高い牛乳が提供されています。
国内需要が賄えない
国内で生産される牛乳は需要量を大きく下回っています。
牛乳の生産は衛生面の管理などを徹底的におこなう必要がありますが、燃料価格の高騰・穀物価格の上昇などにより牛の飼育費が上昇しており、国内の牛乳の価格が上昇しています。
国内で飼育されている牛の飼育数を倍近く増やす計画などがあり、牛乳の生産量は今後増加すると思われます。
ブラジル
ミルク 情報
ブラジルのミルク
牛乳はブラジルで利用されるポルトガル語で「leite(レイチェ)」です。
ブラジルの牛乳生産地
主に南東部の「ミナスジェライス州」、中部の「ゴイアス州」、南部の「パラナ州」、「リオグランデ・ド・スル州」、南東部の「サンパウロ州」、西部の「ロンドニア州」、東部の「バイーア州」、南西部の「サンタカタリーナ州」などで多く生産されています。
生産性は高いが問題も多い
国内で非常に多くの乳牛が飼育されていますが、「牛乳を生産するための家畜」として閉ざされた環境で飼育されており「牛がストレスを抱える」などの問題が発生しています。
「動物の家畜化」は一万年前からおこなわれている種もあり、人の生活に密接に関わりがありますが、近年は「効率化を求めた家畜の飼育」がおこなわれる傾向が強く、飼育の方法を問題視する国が増加しています。ヨーロッパを中心に「家畜に動物らしい生き方」をさせる酪農家などが増加しており、「広い場所で生活させる」などの「ストレスの低減化」がおこなわれています。
ロシア
ミルク 情報
ロシアのミルク
牛乳はロシア語で「молоко(マラコー)」です。
ロシアの牛乳生産地
主に西部の「クラスノダール地方」「モスクワ州」、中南部の「アルタイ地方」、中南西部の「タタールスタン共和国」「バシコルトスタン共和国」、北東部の「レニングラード州」、中南西部の「ウドムルト共和国」、南西部の「ヴォロネジ州」、中西部の「スヴェルドロフスク州」などで多く生産されています。
生産者と加工業者の問題
タタールスタン共和国は非常に多くの牛乳を生産していますが加工施設が不足しており、生産した牛乳を「モスクワ州」などに送り加工処理をおこなっています。
ロシアの様々な牛乳の加工品
ロシアには様々な牛乳の加工品が存在します。一般的に有名なチーズ・ヨーグルトの他に「Кефир(ケフィール)」「Ряженка(リャジェンカ)」「Снежок(スニェジョーク)」など様々な牛乳を加工したものが存在します。
・ケフィール
「ケフィール」は日本で「ケフィア」と呼ばれる飲み物です。牛・ヤギの乳に「ケフィアグレイン」という酵母を加え発酵させた「飲み物になったヨーグルト」です。
ケフィールは含まれるグルコースが酵母により分解され、「エタノール」が生成されます。そのため、ケフィールには低量のアルコールが含まれる事があり、飲料に注意が必要になります。
ケフィールは基本的に「酸味が強い飲み物」ですが酸味の弱い物も多く、ロシアや東欧では日常的に消費される飲み物です。
・リャジェンカ
「ウクライナ」発祥の飲み物です。リャジェンカは長時間火にかけた牛乳に酵母を加え発酵させた飲み物です。味はケフィールと大きく異なりまろやかで、少し褐色の飲み物です。
・スニェジョーク
スニェジョークはヨーグルトに砂糖を加えた発酵乳飲料です。「ブルガリア」で利用されるヨーグルト菌が利用されているのが特徴です。
ロシアには他にも様々な牛乳を加工した乳飲料が存在しており、それぞれ特徴が異なります。
フランス
ミルク 情報
フランスのミルク
牛乳はフランス語で「Le Lait(ルレ)」です。
フランスの牛乳生産地
主に「ブルターニュ地域圏」「ノルマンディー地域圏」「ペイ・ド・ラ・ロワール地域圏」などの北部から北西部で多くの酪農がおこなわれています。
チーズ生産大国
フランスのチーズは世界的に有名です。国内で生産されたチーズは世界中で人気があり、非常に多くのチーズを海外へ輸出しています。
減少する牛乳の消費量
フランスでは牛乳の消費量が大きく減少しています。ヨーロッパの多くの国々で牛乳の消費量が減少しており、「牛乳を全く消費しない人」も増加傾向です。
テュルキエ(旧トルコ)
ミルク 情報
テュルキエのミルク
牛乳はテュルキエ語で「Süt(スゥト)」です。
テュルキエの牛乳生産地
主に中南部の「コンヤ県」、西部の「イズミル県」「バルケスィル県」、中西部の「アフィヨンカラヒサール県」、南西部の「ブルドゥル県」などで多くの牛乳生産がおこなわれています。
ヨーロッパで有名なテュルキエのヨーグルト
ヨーグルトは様々な国で起源が主張されていますが、テュルキエも発祥の地の一つとされています。ヨーグルトの語源は古代テュルキエ語の「yoğurt(ヨウルト)」であり、意味は「かき混ぜる」です。
ニュージーランド
ミルク 情報
牛乳生産大国
ニュージーランドは「牛乳生産大国」であり、国内で生産された多くの牛乳が海外へ輸出されています。非常に質の高い牛乳や加工品が100ヵ国を超える国々に輸出され、国内の多くの人が酪農に携わっています。
ニュージーランドの牛乳生産地
ニュージーランドの牛乳の生産は「北島」が多く、「北オークランド地方」「南オークランド地方」の生産が多くなります。
イギリス
ミルク 情報
イギリスの牛乳生産地
イングランド南東部の「バッキンガムシャー」がイギリス最大の牛乳生産地です。国内で生産される牛乳の10%以上がバッキンガムシャーで生産されており、世界でも有数な生産地の一つです。
ドイツ
ミルク 情報
ドイツのミルク
牛乳はドイツ語で「Milch(メリヒィ)」です。
ドイツの牛乳生産地
主に南東部の「バイエルン州」、北西部の「ニーダーザクセン州」など多くの酪農がおこなわれています。
減少する酪農家
国内の酪農家の数が減少しています。ドイツは寒冷な土地を有しており、牛の飼育にはある程度の設備が必要になります。上昇する燃料費や飼料価格の上昇により採算がとれない農家などが増加しており、多くの酪農家が廃業しています。
まとめ
酪農の変化
搾乳や農業の補助として牛が世界中で飼育されていましたが、工業化が進むにつれ効率が求められるようになり、大量生産をおこなう酪農家が増加しました。
日本で本格的に酪農が開始されたのは江戸後期から明治であり、戦後に食の欧米化により拡大しました。現在も世界と比べると消費量は少なく、学生が夏休みなどになると牛乳の消費量は更に減少します。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考
FAO, FAOSTAT. "Crops and livestock products - Milk, Total, Production (t)" (English) 1961-2021年. ©FAO 2024. 2023年08月19日閲覧。
FAOの利用規則はこちら (English) です。
サムネイル:Pixabay
ライセンスに関してはこちら (English) をご覧ください。