バターの代用品としての利用
「マーガリン」は「パーム油」「ラード」などの植物性・動物性の油脂を原料として「バター」に似せて作られた食品であり、主にバターの代用品として利用されています。原料が高価なバターに比べ価格を抑える事が可能な食品で、世界中で利用されています。
マーガリンは世界でどのくらい生産されているのでしょうか?
世界のマーガリン
生産量ランキング
世界のマーガリン生産量
世界一位 米国
世界二位 パキスタン
世界三位 ブラジル
世界のマーガリン生産量ランキング
Production
Margarine and shortening
国 | 生産量 (トン) (t) 2020年 | |
世界 | 14,679,165 | |
1 | 米国 (America) ![]() | 4,028,652 |
2 | パキスタン (Pakistan) ![]() | 1,815,260 |
3 | ブラジル (Brazil) ![]() | 937,876 |
4 | テュルキエ (Turkiye) ![]() | 749,558.8 |
5 | インド (India) ![]() | 691,700 |
6 | メキシコ (Mexico) ![]() | 648,781 |
7 | ロシア (Russia) ![]() | 441,218.5 |
8 | ベルギー (Belgium) ![]() | 415,000 |
9 | ケニア (Kenya) ![]() | 396,671.6 |
10 | インドネシア (Indonesia) ![]() | 371,141 |
11 | 日本 (Japan) ![]() | 363,586 |
12 | ドイツ (Germany) ![]() | 352,600 |
13 | パキスタン (Pakistan) ![]() | 327,800 |
14 | イギリス (U.K) ![]() | 255,000 |
15 | ウクライナ (Ukraine) ![]() | 232,223 |
16 | オランダ (Netherlands) ![]() | 205,316.4 |
17 | マレーシア (Malaysia) ![]() | 190,707 |
18 | イタリア (Italy) ![]() | 150,000 |
19 | スウェーデン (Sweden) ![]() | 149,043.3 |
20 | スペイン (Spain) ![]() | 133,443.7 |
21 | カナダ (Canada) ![]() | 108,000 |
22 | ペルー (Peru) ![]() | 102,436 |
23 | オーストラリア (Australia) ![]() | 101,204.4 |
24 | チュニジア (Tunisia) ![]() | 96,567.62 |
25 | ハンガリー (Hungary) ![]() | 78,620.01 |
26 | ルーマニア (Romania) ![]() | 77,000 |
27 | 南アフリカ共和国 (South Africa) ![]() | 72,487.95 |
28 | デンマーク (Denmark) ![]() | 70,000 |
29 | オーストリア (Austria) ![]() | 67,500 |
30 | ベネズエラ (Venezuela) ![]() | 66,177.48 |
31 | カザフスタン (Kazakhstan) ![]() | 62,973 |
32 | フランス (France) ![]() | 59,719.05 |
33 | ノルウェー (Norway) ![]() | 55,800 |
34 | ウズベキスタン (Uzbekistan) ![]() | 50,052.32 |
35 | アゼルバイジャン (Azerbaijan) ![]() | 49,894.2 |
36 | チェコ (Czech) ![]() | 49,200 |
37 | フィンランド (Finland) ![]() | 46,728.17 |
38 | コロンビア (Colombia) ![]() | 43,984.23 |
39 | ギリシャ (Greece) ![]() | 39,100 |
40 | ポルトガル (Portugal) ![]() | 34,000 |
41 | タイ (Thailand) ![]() | 30,937.7 |
42 | イラン (Iran) ![]() | 30,583.57 |
43 | セルビア (Serbia) ![]() | 29,084 |
44 | エジプト (Egypt) ![]() | 25,536.56 |
45 | ジンバブエ (Zimbabwe) ![]() | 24,656.77 |
46 | イスラエル (Israel) ![]() | 24,165.27 |
47 | ボリビア (Bolivia) ![]() | 22,288.85 |
48 | スイス (Switzerland) ![]() | 22,000 |
49 | アルゼンチン (Argentina) ![]() ![]() | 17,225.63 |
50 | エクアドル (Ecuador) ![]() | 16,105.15 |
51 | アイルランド (Ireland) ![]() | 15,000 |
52 | スロバキア (Slovakia) ![]() | 13,700 |
53 | コートジボワール (Ivory Coast) ![]() | 13,345.12 |
各国のマーガリン
情報

マーガリンとバターの違い
・マーガリン -「パーム油」「ラード」などの植物性・動物性の油脂を80%以上、40%以下の乳成分で構成されています。
・バター - 乳製品が80%以上で構成され、「牛乳」から分離されたクリームが原料になります。
マーガリンにも商品により「牛乳」などの乳成分が加えられているものも多く、個々に構成される成分が違います。
マーガリンは体に悪いの?
マーガリンやバターには「トランス脂肪酸」という体に悪影響を与える「コレステロール」が含まれています。大量に摂取を続けた場合、体重の増加や心臓疾患のリスクが上昇する恐れがあり注意が必要です。
現在販売されているマーガリンはトランス脂肪酸の含有量が非常に低く、バターに含まれる含有量を下回るものが多く存在します。
マーガリンは植物性の油が利用されているの?
日本で販売されているマーガリンのほとんどが「植物性油脂」が利用されています。植物性油脂は「パーム油」「大豆油」「ヒマワリ油」などの「油」になります。
また、マーガリンには「食用性加工油脂」が含まれています。食用性加工油脂は原料の油にニッケル・銅触媒を加え高温で加熱し、「水素」を添加する事により「固形」になり、同時に「酸化」しにくくなります。固体状になった植物性加工油脂に植物性油脂を加え、マーガリンの「なめらかさ」を出します。「トランス脂肪酸」はこの過程でできる副産物であり、多くの企業がトランス脂肪酸を減らす努力をしています。
植物加工油脂の精製は上記のように水素を加える方法以外にも溶剤を加え遠心力で分離させる「分別」・原料の油にナトリウムメキシドや水酸化ナトリウムなどの塩に「酸素」を加える「エステル交換」などが存在します。
動物性の油は利用されない?
動物油脂・植物油脂・又は混合油脂を「食用性加工油脂」として利用する事ができます。また、マーガリンには風味を出すために「脱脂粉乳」「発酵乳」などの乳成分が含まれているものが多く存在します。
マーガリンと鯨
19世紀になり、「石油」の利用が増加すると共にそれまで使われていた「鯨油:クジラからとれる油」の利用が減少しました。利用されなくなった鯨油は「マーガリン」の原料として使用される事が多くなっています。
米国
マーガリン 情報
米国のマーガリン
マーガリンは英語で「margarine(マージャリン)」です。
植物から作られる
過去にアメリカでは「牛脂」からマーガリンを製造していましたが、現在は原料となる「トウモロコシ油」「大豆油」など様々なものからマーガリンが生産されています。生産されているマーガリンには「塩」が含まれていますが、塩分を控えるマーガリンなども多く生産されています。
原料は世界中に輸出されている
原料の「トウモロコシ」「大豆」などは「バイオ燃料」「家畜の飼料」などにも利用されており、世界中に輸出されています。日本ではこれらの原料の生産が限定的であり、多くをアメリカから輸入しています。
パキスタン
マーガリン 情報
パキスタンのマーガリン
マーガリンはパキスタンで利用されるウルドゥ語で「مارجرین(マージャリン)」です。
パキスタンは乳製品大国
パキスタンは「バター」の生産量が「インド」に次いで多く、非常に多くの乳製品が生産されています。
バターが人気
パキスタンではバターより多くのマーガリンが生産されており、オランダの多国籍食品会社が販売する「ブルーバンド」というマーガリンが非常に有名で人気があります。しかし、価格が高額のため、国内産の安いバターが一般的なパキスタンの食卓に上がる傾向があります。
ブラジル
マーガリン 情報
ブラジルのマーガリン
マーガリンはブラジルで利用されるポルトガル語で「Margarina(マーガリーナ)」です。
ブラジルのマーガリン人気
ブラジルではマーガリンがバターよりも多く売れています。国内でマーガリンの原料となる油脂作物が多く生産されており、低価格でマーガリンを生産する事が可能でですが、国民の1/3以上が「バターはマーガリンより健康に良い」と考える人が多くなっています。
高カロリーの食品が避けられる
ブラジルでは生活習慣病の増加と共に消費者の健康リスクに対する意識が向上しており、バターなどの高カロリーな食品を避ける人が増加しています。
テュルキエ
マーガリン 情報
テュルキエ(旧トルコ)のマーガリン
マーガリンはテュルキエ語で「margarin(マーガリン)」です。
テュルキエのマーガリン
テュルキエでは1950年代にイギリスの「ユニリーバ」がトュルキエへ進出、米国から輸入される安価な「大豆油」からマーガリンを製造しています。
テュルキエの油事情
1950年代以降に利用される「油」はテュルキエ南部の「シャンルウルファ」・北西部の「トラブゾン」で生産された油、羊の脂肪などから抽出される油が一般的に利用されています。
テュルキエの人口増加と共に「ヒマワリ油」「トウモロコシ油」など安価な油が登場しましたが、現在も「バター」が多くのテュルキエ料理に利用されています。
インド
マーガリン 情報
インドのマーガリン
マーガリンはインドで利用されるヒンディー語で「नकली मक्खन(ナキリ― マーカン)」です。
インドのバター文化
インドは「ヒンドゥー教」の母体となる「バラモン教」時代からバターが利用されており、非常に長い歴史があります。マーガリンはインドが「イギリスの植民地時代」に伝わった食べ物で全国に普及しましたが、マーガリンの生産量はバターの1/5です。
インドを主体とするヒンドゥー教は菜食主義者が多く、乳製品を摂取しない人も多く存在します。
バターからマーガリンへ
インドのマーガリンは「トランス脂肪酸を含まない」「ビタミンA、E、Dが豊富」「低カロリー」のものが増加しています。生活習慣病が増加するインドでは「少しでもカロリーの低いもの」が好まれる傾向があり、バターからマーガリンに変える人が増加しています。
メキシコ
マーガリン 情報
メキシコのマーガリン
マーガリンはメキシコで利用されるスペイン語で「margarina(マルガリーナ)」です。
メキシコ人はバターが大好き
メキシコのバターの輸入量は「中国」「ロシア」に次いで世界三位です。この量は非常に多く、ヨーロッパで輸入されている全てのバターより多くのバターがメキシコに輸入されています。
メキシコのマーガリンの需要は伸びている
メキシコは「マーガリン」「ショートニング」の需要が増加しています。近年「植物性原料」が利用される事が多く、天然素材を好むメキシコの新しいニーズに受け入れられています。
マーガリンは「健康に悪い」はもう古い
メキシコの消費者はマーガリンに「新しさ」を求む傾向があり、近年では「ココナッツ」「アーモンド」「オリーブ」などから抽出される油からマーガリンが生産されています。
新しい売り方
マーガリンは原料を様々な物から選ぶ事ができる食品です。生産者の努力により質の高さ・生産プロセスの透明化・顧客のニーズに合わせた商品が増加しており、今後も更に増加すると思われます。
ロシア
マーガリン 情報
ロシアのマーガリン
マーガリンはロシア語で「маргарин(マーガリン)」です。
ロシアのマーガリン事情
ロシアではマーガリンは人気のある商品ですが、一般的に「健康に悪い」という印象があります。ロシア国内ではマーガリンに含まれる「トランス脂肪酸」の含量は2%以下に指定されており、それ以上のマーガリンは販売する事ができません。
ロシアの油事情
ロシアは多くの家庭で「ヒマワリ油」「菜種油」が利用されます。これらはロシア国内で非常に多く生産されており、マーガリンの原料としても利用されています。
ロシアは油の摂取量が多い?
非常に多く摂取します。ロシアの主食は「ジャガイモ」「パン」「カーシャ(そばの実など)」などが多くなりますが、これらは基本的に「バター」と共に消費されます。ロシア人は「スイーツ」も大好きで、これらの原料に様々な油が含まれています。
ケニア
マーガリン 情報
ケニアのマーガリン
マーガリンはケニアで利用されるスワヒリ語で「majarini(マーガリーニ)」です。
ケニアで人気のマーガリン
ケニアでもオランダの多国籍食品会社が販売する「ブルーバンド」は非常に人気があり、日常的に利用されるマーガリンです。ブルーバンドマーガリンはケニアでも安価に購入する事が可能であり、パンに塗る以外にも「お粥」「パスタ」などの料理に加えられます。
ベルギー
マーガリン 情報
ベルギーのマーガリン
マーガリンはベルギーで利用されるフランス語で「margarine(マーハガリン)」です。
ベルギーのマーガリン生産
ベルギーはマーガリンの原料となる油の輸入が多く、輸入された油が国内で加工されています。菓子やパンに利用される「ショートニング」も多く生産されており、様々な物に利用されています。
「ショートニング」ってなに?
「ショートニング」は動植物油を原料としたクリーム状の「食用油脂」であり、「マーガリン」から水分や添加物を除いたものです。パンや菓子などに加え「サクサクとした触感」を作り出します。
インドネシア
マーガリン 情報
インドネシアのマーガリン
マーガリンはインドネシア語で「margarin(マールガリン)」です。
パーム油の生産地
インドネシアは「パーム油」を非常に多く生産しており、多くのマーガリンに加工されます。インドネシアは「マーガリンの輸出量世界一」であり、主な輸出先は「中国」「ナイジェリア」「イタリア」「アルジェリア」「ロシア」などに多く輸出されています。
また、日本から多くマーガリンが輸入されており、日本製のマーガリンを好む人も多く存在します。
インドネシアで人気のあるマーガリン
「パキスタン」と同様に「ブルーバンド」のマーガリンが人気があります。
ドイツ
マーガリン 情報
ドイツのマーガリン
マーガリンはドイツ語で「Margarine(マーガリーナ)」です。
ドイツのマーガリン
ドイツも多くのマーガリンを生産しており、生産したマーガリンを海外へ輸出しています。主に「オランダ」「ポーランド」「フランス」「イギリス」「オーストリア」などのヨーロッパ圏を中心に輸出しています。
まとめ
質の良いマーガリンの登場
日本でも「マーガリン」に対し悪い印象を持つ人が多いと思いますが、「原材料にこだわった質の高いマーガリン」が多く登場しています。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考
FAO, FAOSTAT. "Crops and livestock products - Margarine and shortening, Production (t)" (English) 1961-2021年. ©FAO 2024. 2022年12月14日閲覧。
FAOの利用規則はこちら (English) です。
サムネイル:Pixabay
ライセンスに関してはこちら (English) をご覧ください。